天の香具山登り立ち國見をすれば…
うまし國ぞ あきづ島大和の國は

八百万神に、豊かな自然を感謝しつつ生きていた大和の人々は文字を知り、豊かな感情、深い思想、高い技術、確かな法律の探求に目覚め、美しい文化の華を咲かせてゆく。 古代の大思想が結晶した和の憲法も、語り継がれた歴史を記した古事記も、 大自然を謳歌した万葉集も、大仏や五重の塔の輝く奈良の都も、 美しい文化の結実としてあらわれてくることばが文字を得た大和時代は、民族の永遠ならふる里であろう。

卑弥呼

部族間の対立に祈祷による無私の裁定をくだし、大和の国を平和に導いたといわれる日乃御子の智恵が、愛と競いの二重構造からなる政体を生み、 歴史に栄ある縦糸をたらしたのであろうか。

田道間守

万里の波涛を乗り越えて珍果をもたらした勇者は、 みかどの墓前に哭死する純忠の士でもあった。田道間守は果祖神として祀られていると共に、忠臣として垂仁陵に合祀され陵水に美しい精神を寫している。

物部守屋

保守か、革新か、守屋と馬子の信念は、大氏族の興亡を賭けて激突し、その選択を迫ってゆく。守屋の飼った犬が、他人からの食を絶って飢え死にしたとの逸話に時流が選ばなかった、名将の面影がしのばれる。

蘇我馬子

仏教思想流入の波に乗り、大氏族を形成した馬子は、物部氏との決戦に勝利し、仏教立国をめざしてゆく。馬子の夢は、今も聖徳大子の背に光っている。

藤原鎌足

外敵から国を守るため、大化の改新を企画、演出し、参謀機能を見事に輝かした鎌足の智恵は、子孫に受け継がれて、 藤原氏の黄金時代を築いてゆく。

中大兄皇子

海外からの圧力に律令国家への夢が高まり、大化の改新への血路を皇子の気迫が切り拓いてゆく。皇子の示した偉大な勇氣を尊ぶと共に、夢が血を求める時代の悲しみを歴史は伝えてくる。

大海人皇子

文化の改新、白村江の戦、壬申の乱、うち続く激流を悠然と乗り切ってゆく偉大な皇子は、恋を大らかに歌う詩人でもあり、大海の如き人格の魅力は、今も光彩を放っている。

額田王

熟田津に船乗せむと月待てば、 潮もかなひぬ今はこぎ出でな 七世紀における民族の雄叫びが、額田王の言葉によって永遠に響く存在となってゆく。

大安万呂

文字を知られぬ時代の民族の夢が、詩情豊かな安万呂の筆を通して現われてくる。神代を語る古事記は 民族の永遠なる誇りとなり、夢の泉となってゆく。

柿本人麻呂

あしひきの山河の瀬の響るなへに 弓月が獄に雲立ち渡る万葉歌聖のことばによって 玄妙な自然が浮きでてくる 人麻呂は、大自然からの使者ではなかろうか。